国産は約1割!?落花生の種類と選び方をわかりやすく解説
カリカリとした香ばしい食感で、食べだすと止まらなくなってしまう落花生。 落花生にはさまざまな種類があります。産地が同じでも種類によって大きさや味は違うため、種類を知ることで自分好みの落花生を探しやすくなります。 そこで今回は、落花生の生産状況と品質、種類、選び方について詳しく解説します。
落花生の生産状況と品質
普段口にしている落花生は、どこでどのように生産されているのでしょうか。ここでは落花生の生産状況と品質を紹介します。
流通している約1割が国産
南米原産のマメ科作物である落花生。現在日本での落花生流通量は、全体の90%が外国産で、国内産は約10%程度だといわれています。つまりスーパーで並んでいるような一般的な落花生は、そのほとんどが外国産です。
調製した落花生の輸入先上位1~3位の国と輸入量は以下のとおりです。
国 | 輸入量(kg) | |
---|---|---|
1位 | 中華人民共和国 | 47,148,513 |
2位 | アメリカ合衆国 | 780,413 |
3位 | ベトナム | 30,513 |
日本では明治7年から各地で栽培が推奨され、昭和40年には落花生の作付面積が66,500haとなりピークを迎えました。しかしその後、輸入などの影響で徐々に減少していき、平成30年には作付面積が6,370haとなりました。現在国内で生産される落花生のうち、83%が千葉県で、10%が茨城県で生産されています。
落花生の分類
落花生は学名をArachis hypogeae L.アラキス・ヒポゲアといいます。アラキスは属名、ヒポゲアは種小名、L.は命名者でこの場合は分類学の父と呼ばれるリンネを表します。命名は栽培種になされたもので、トウモロコシなどと同じように落花生は野生種ではありません。落花生の起源となった野生種はおおよその推定がついているようです。
落花生の分類は下記のとおりです。
なお、学名はラテン語でなされています。ラテン語は現在話されていないコトバであるため、読み方に厳密な決まりはありません。以下、慣用的な読みに従います。
- 変種var.hypogaea ヒポゲア「バージニア種」
- 変種var.hirstaヒルスタ「ランナー種(ペルー・タイプとも呼ばれる)」
- 変種var.fastigiataファスティギアタ「バレンシア種」
- 変種var.vulgarisブルガリス「スパニッシュ種」
亜種ssp.hypogaea ヒポゲア
亜種ssp.fastigiata ファスティギアタ
以上の4変種に分類されます。これらの変種から複雑に交配され、現在の落花生の品種群ができています。
「バージニア種」は最も粒が大きく、良く育った殻の中に実が2個入っています。煎り莢、煎り豆、バターピーナッツなどに加工され、実の原型を留めたまま食べられることが多いです。
「スパニッシュ種」は、赤みがかった茶色の渋皮で覆われた小ぶりの粒が特徴です。殻の中には3~4個の実が入っています。他種に比べると油分の含有量が多く、ピーナッツキャンディーやピーナッツバターの生産に使用されることが多いです。
「バレンシア種」は1つの殻に3つ以上の小さな実が入っており、甘みがとても強いことが特徴です。ローストされ殻つきのままで食べることが多いですが、茹で食べることにも適しています。
落花生の等級
落花生には、品種だけではなく等級もあります。同じ品種でも等級で価格や用途が大きく異なります。一般的には、機械と手作業によって複数回にわたる選別作業が行われ、実の太さによって太い順に一等、二等、三等、四等、五等と分類されます。
実が太く大きい一等~二等は味もしっかりしているため、さや付き落花生や塩味つき落花生など実の原型を残した加工品に利用されることが多いです。分かりやすいよう「特選」と表記して販売しているお店もあります。
等級が下がるほど実は細くなり、価格は安くなります。小さめの実のカリカリとした食感を生かしてバターピーナッツに加工したり、ピーナッツオイルなどの形が変わる商品に加工されることが多いです。
国内で生産される落花生の種類
野菜やお米と同じように、国内の落花生も品種改良が行われており、よりおいしく栽培しやすい品種が作られています。ここでは、国内で生産される落花生のうち83%を栽培する千葉県で主流な落花生の種類と、その特徴を紹介します。
千葉半立(ちばはんだち)
落花生の名産地、千葉県を代表する品種が「千葉半立」です。昭和21年、八街町と誉田村で収集された従来の匍匐(ほふく)品種とは草姿が異なる半立種からの純系分離により、昭和27年千葉県農試で育成されました。
少し小粒で、殻に黒い斑点模様がつきやすいことが特徴です。かなり甘味が強く、香ばしさと柔らかな食感が楽しめます。栽培が難しく収穫量が少ないため価格は高めですが、味にこだわりのある方に選ばれる最高級ブランドの落花生です。
【参考】落花生|旬鮮図鑑-千葉県
中手豊(ナカテユタカ)
中手豊は、昭和54年に千葉県農業試験場で品種改良され生まれた品種です。「千葉半立」に「千葉55号」を交配してできた「関東8号」に「334A」という品種を交配させて作出されました。
「千葉半立」と比べるとややさっぱりとした味わいで、甘味はそこまでありません。
殻に黒い斑点は出にくく、白くきれいな殻に育ちやすいです。大粒で見栄えが良いため、贈り物にも適しています。
収穫量が多く、手頃な価格で入手しやすいことも特徴です。
郷の香(さとのか)
「郷の香」は、平成7年に千葉県農業試験場にて品種改良され生まれた、比較的新しい品種です。
ゆで落花生用として、「中手豊」と「八系192号(「タチマサリ」と「忠州」の交配種)の交配種です。そのため味わいや見栄えは中手豊と似ており、あっさりとした味わいと白くきれいな殻が特徴です。
塩ゆですると塩味が実にしっかりと染み込みます。8月中旬から収穫され、いち早く新豆が楽しめます。
おおまさり
「おおまさり(関東102号)」は、平成21年の秋から販売開始された新しい落花生です。「おおきな莢(さや)で食味が勝る」ため「おおまさり」と名付けられました。
アメリカのジェンキンスさんが育種・命名した「ジェンキンス・ジャンボ」という粒の大きな落花生を親に、ゆで落花生用として品種改良されました。親の「ジェンキンス・ジャンボ」と同様、中手豊の約2倍はある大きな粒が特徴です。
塩ゆでするとホクホクと柔らかな食感と濃厚な甘味が楽しめます。8月下旬~9月初旬頃に収穫され、収穫時期が遅くなるほど粒が硬くなります。
Qなっつ(品種名:千葉P114号)
「Qなっつ」は2018年に新品種として発表された品種です。「これまでのピーナッツを超える味」ということで、アルファベットの並び順で「P」の次の「Q」から、「Qなっつ」と呼ばれます。
その名のとおり、今までの落花生よりショ糖含有量が多くはっきりとした甘味が特徴です。後味はさっぱりしており、油分が多くカリッとした食感で食べやすいです。
「郷の香」と「関東96号」を交配して作出されました。「関東96号」は「千葉半立」と「土の香(関東66号)(「中手豊」と「サチホマレ」の交配種)」の交配種です。
千葉県では「Qなっつ」に続く新品種として「おおまさりネオ」(「おおまさり」と「郷の香」の交配種)を作出しています。「おおまさり」の栽培上の短所を改善した品種だそうです。
落花生の選び方
落花生の選び方は、見た目で選ぶ方法と、用途に合わせて選ぶ方法の2つです。
ここでは、どのような見た目の落花生がおいしいのか、また、用途別にどのような落花生を選べば良いのかを具体的に説明します。
見た目で選ぶ
おいしい落花生を見極めるには、見た目が重要なヒントとなります。「大きい方が食べ応えがあっておいしそう」と思うかもしれませんが、実は新鮮でおいしい落花生は、実が大きすぎないもの。実が大きすぎるものは収穫適期を過ぎていることが多く、風味や食感が落ちてしまっています。
また殻の網目にも注目しましょう。殻が白くてつるつるしている落花生は、未熟なまま収穫されているため、実が小さく味も薄いものが多いです。おいしい落花生を選ぶには、殻の網目がはっきりしているものにしましょう。腐って殻が黒く湿っていないか、殻に虫食い穴が空いていないかもチェックしてください。
用途に合わせて選ぶ
用途に合った落花生を選ぶことも重要です。
落花生を自分好みの味にしたいなら、調理法や味付けを自由に調整できる生タイプがおすすめです。自分でローストすると芳しい香りも楽しめて、調理の過程から落花生を味わいつくせます。
料理に使うなら、手軽な素煎りの剥き落花生がおすすめです。落花生はそのまま食べることはもちろん、お菓子や料理など幅広く使える食材です。素煎りの剥き落花生なら、落花生の素朴な味わいを料理に活かせます。
オレイン酸やリノレン酸といった栄養素を豊富に含む落花生は、健康や美容のために日常的に食べる方も多いでしょう。健康や美容に役立てるなら、過剰な油分や塩分を摂取しないよう、無塩で油不使用のものがおすすめです。
まとめ
今回は、落花生の生産状況と品質、種類、選び方について紹介しました。
さまざまな品種がある落花生。「普段あまり考えずに落花生を選んでいる」という方は、ぜひ品種に注目して自分好みのものを選んでみてください。落花生の楽しみ方がさらに広がります。