ナッツは腸活に効果がある?おすすめのナッツを解説
朝食や間食に気軽に食べられて、美容と健康に良い栄養素がぎゅっと詰まったナッツは、スーパーフードとして注目を集めています。ナッツは食物繊維を豊富に含んでおり、腸内環境を整える「腸活」にも最適な食材です。また、ω-3系やω-6系といった必須脂肪酸も腸内細菌叢によい影響をえることがわかってきました。このように腸活には、身体のトラブルを解消するさまざまなメリットがあります。 そこで今回は、腸活の仕組みやメリット、おすすめのナッツについて紹介します。
腸活とは?
腸活とは、バランスの良い食生活や適度な運動などによって腸内環境を整え、良好に保つこと。まずは、腸活の仕組みとメリットを解説します。
腸活の仕組み
腸は、人間の身体に必要な栄養素を吸収し、有害な物質を排出する機能を担う器官です。ここには腸内細菌がたくさん棲みついており、独特なエコシステムが形成されています。
人体の細胞数はおよそ60兆個、腸内細菌数は100兆個以上(1000兆個とも)といわれており、人の細胞の数より多いです。大腸内の腸内細菌を顕微鏡で覗くと菌の塊が隙間なく張り付いておりお花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれると解説されますが、学術用語の解釈が違うような気がします。どなたか初出を教えていただけると助かります。
腸内の細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の大きく3つに分類されます。善玉菌は、大腸の健康を維持する有機酸を作り、排便や水分吸収を促します。悪玉菌は、老廃物を作り、有害物質を発生させますが、たんぱく質を分解し、便として排出する役割があり、増えすぎると困るだけで人の身体にとって不必要なものではありません。日和見菌は腸内の健康状態によって良い働きも悪い働きもする菌です。
これらの理想のバランスは、「善玉菌2割:悪玉菌1割:日和見菌7割」といわれ、このバランスを保つことで腸内の健康が維持されます。バランスが崩れると、大腸がんなどの腸の疾患だけでなく、糖尿病、肥満、高血圧、炎症性疾患など、さまざまな疾患を引き起こすリスクが高まるでしょう。
腸内細菌は免疫機能や体質などにも関わり、人体に大きな影響を与える重要な存在です。腸内の健康を維持することで、腸そのものだけでなく身体全体の健康維持にもつながるといえます。
腸活のメリット
腸活と脳活(精神疾患・認知症)
腸と脳は随分と離れた場所にある器官ですが、実は密接に関係しているということがわかってきました。このことを「脳腸相関」とよびます。
うつ病は慢性的なストレスが原因となることが多く、現代社会の重たい課題のひとつです。ストレスは腸内細菌に影響を与えることが知られており、腸内細菌とうつ病との関連が示唆されています。多くの研究はマウスを使ってのもので、人への応用はまだまだこれからといったところですが大いに期待されています。
他にも腸内細菌と自閉症スペクトラム障害との関わりも知られています。腸内細菌の異常ですべてが説明されるわけではないようですが、胃腸障害と自閉症スペクトラム障害の関連が知られています。こちらも人への応用はこれからのようです。
こうしてみると人の個性も腸内細菌次第、という側面もありそうです。
また、認知症と腸内細菌叢も関係しているという報告もあります。詳しいメカニズムは分かっていないようですが、興味ぶかい研究結果ですね。
【参考】国立健康開発法人国立長寿医療研究センター あなたの腸は大丈夫? ―いきいき腸内細菌!― (ncgg.go.jp)
腸活と免疫
腸は人の主要な免疫組織で、抗体を作る免疫細胞の80%以上が腸に存在し、抗体を作るよう指示するT細胞の過半数が腸にあります。腸をはじめとする消化器官は「内なる外」ともよばれ、特に腸には多様な腸内細菌が分布しています。この腸内細菌を異物とすると、腸に免疫機能の多くが集まっていることは不思議ではありません。
腸の免疫機能をコントロールする要因には腸内細菌、栄養素、生活習慣があるとされています。腸内細菌叢が劣化するとウイルスや細菌への防御機能が低下するとともに、免疫力が低下します。
ナッツに豊富な食物繊維は善玉菌によって短鎖脂肪酸(酪酸や酢酸など)になり、腸管免疫系の改善、感染防止、アレルギー・炎症の抑制につながると考えられています。
また、亜鉛、マグネシウム、カルシウムといったミネラル、アミノ酸のアルギニンは免疫系を活性化するとされ、いずれもナッツに含まれています。
【参考】免疫力向上と食品―腸管の重要性花王 | 花王健康科学研究会 | 「免疫力向上と食品 ―腸管の重要性―」 (kao.com)
腸活と腸疾患
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)についてお聞きになったことはあるでしょうか。1980年代より爆発的に増加しています。社会的な変化が惹き起こしたのでしょうが、衛生環境の変化、抗生物質の多用、食事内容の欧米化、食品添加物の多用など、複雑な要因が絡まっているようです。こうした変化が人の腸内細菌叢に変化をもたらし、新たな病態の増加につながったと考えられています。
腸内細菌によって作られる短鎖脂肪酸のうち酪酸は抗炎症作用があり、大腸炎の抑制にかかわっている可能性が示唆されています。腸内細菌だけで腸疾患のすべてが説明されるものではありませんが、他の要因として食事内容もかかわっているようです。特に飽和脂肪酸の摂取増加が腸炎と深い関係があるといわれています。
【参考】安藤朗日本内科学会雑誌第106巻第3号 (jst.go.jp)
腸活とがん
大腸がんの患者の食生活を調べた研究によると、欧米型の食事よりも脂肪やコレステロールを抑えた食事、特に食物繊維の多い食事が大腸がんのリスクが低いといわれています。
大腸がんの抑制にはさまざまなアプローチがありますが、その一つに食物繊維を摂取することで腸内細菌によって産生された短鎖脂肪酸が増えることで腸内環境のpHが下がり、病原性腸内細菌を抑えることがあります。短鎖脂肪酸には炎症を抑えるほか、アポトーシス(細胞死)を誘導する働きもあります。
がんの発症には複雑な要因がからんでおり、食物繊維を多くとればOKというものではありませんが、リスクを下げることができるのは間違いないようです。
【参考】吉原ほか 大腸癌における腸内細菌研究の動向ja (jst.go.jp)
なお、大腸がんの進行には歯周病菌が関連しているという研究結果があります。歯周病は食事内容で改善することができ、食物繊維、ω-3系脂肪酸、抗酸化物質などの摂取が予防に効果があるようです。
【参考】三辺ほか 生活習慣病としての歯周病食栄養指導対策ja (jst.go.jp)
腸内細菌は大腸がんばかりでなく乳がんにもかかわっています。最近の研究では、ナッツなどの種実類、豆類などに含まれるリグナンは腸内細菌によって乳がんに対する予防効果をもつ物質に変化することがわかってきました。
腸活と肥満・糖尿病
善玉菌が生成する短鎖脂肪酸の酢酸や酪酸は人のエネルギー効率を変化させますが、腸内細菌叢が乱れると最終的に脂肪蓄積が促進され、肥満の原因の一つとなります。
酢酸や酪酸は抗炎症物質の働きがありますが、腸内細菌の乱れは肥満につながるとともに、生体内の反応経路で最終的に耐糖能異常をひきおこし、2型糖尿病の発症につながります。
1型糖尿病は免疫応答の異常によって発症し、腸内細菌は免疫で深くかかわっています。
腸内細菌は1000種ほどあるとされ、どのような種類の腸内細菌が人の健康に関わっているのかについては知見が深まりつつあります。肥満、ヤセは腸内細菌叢の違いもかかわっているらしく、こうした個人差も考慮すると、医療の現場での活用にはまだ時間が必要なようです。
【参考】肥満・糖尿病と腸内細菌日本内科学会雑誌第104巻第1号 (jst.go.jp)
腸活と便秘
便秘は日本人の約3割にみられるといいます。頑固な便秘の原因はさまざまですが、腸内細菌叢の乱れも便秘につながります。腸内細菌叢の乱れは消化管の蠕動運動を制御する自律神経の乱れにつながります。腸内細菌由来の酪酸などの短鎖脂肪酸も便秘にかかわっているようです。
【参考】尾崎他 慢性便秘症の治療 各論(便秘症と腸内フローラ)(jst.go.jp)
また、腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が増えると、たんぱく質を腐敗させてアンモニア、アミン、フェノール、インドールといった有害物質が多く作られ、ニキビや吹き出物などのお肌のトラブルが発生しやすいです。特に便秘になると、有害物質が身体から排出されないため、肌荒れの原因だけでなく万病のもとになります。腸活で腸内フローラのバランスを適切に維持し、便秘を解消することで、肌のトラブルも減らせるでしょう。
便秘の改善は、基礎代謝を活発にするためダイエットにも効果的です。気になるポッコリお腹が解消される可能性もあります。
腸活におすすめのナッツ
一般的に植物性食品は腸内細菌の多様性を促進するとされています。ここでは腸活におすすめのナッツとして以下の3つを取り上げてみました。
- アーモンド
- くるみ
- ピスタチオ
アーモンド
アーモンドには、食物繊維が豊富に含まれます。100gあたりの含有量は11gで、これは食物繊維が豊富な食材として知られるゴボウの約2倍です。食物繊維は、善玉菌のエサとなり働きを活性化させるため、腸活の助けになります。
食物繊維の種類は、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2つです。
不溶性食物繊維は水分を吸収して便のカサを増やすことで腸の蠕動運動を活発にし、水溶性食物繊維は水に溶けてジェル状となり、小腸での栄養素の吸収を緩やかにして食後の血糖値の上昇を抑えます。
腸内環境を整えるには、これら2つの食物繊維をバランスよく摂取することが重要です。アーモンドにはどちらも含まれているため、腸活への高い効果が期待できるでしょう。
またアーモンドは、善玉コレステロールを維持し悪玉コレステロールだけを減らす働きのある「オレイン酸」も多く含みます。
くるみ
くるみも食物繊維を比較的多く含むナッツで、腸内環境の改善に役立ちます。
また、健康や美容効果で注目を集めている「オメガ3脂肪酸」がナッツの中で最も多く含まれます。オメガ3脂肪酸は、えごま油やアマニ油、青魚などに多く含まれる「健康に良い油」の総称です。くるみに含まれるオメガ3脂肪酸は、青魚の脂肪に含まれるDHA、EPA と同じ仲間である「α-リノレン酸」(ALA)です。α-リノレン酸は、腸の炎症を抑え、善玉菌が増えやすい環境を作ってくれます。
またコレステロール値・中性脂肪値を下げ、動脈硬化や心臓病、がん、脳卒中、2型糖尿病などさまざまな病気の予防が期待できるでしょう。
また、アーモンドと同じく、アミノ酸のアルギニンが豊富で、免疫力アップや、血流の促進、代謝や筋肉の衰えを防ぐ働きがあります。
ピスタチオ
ピスタチオも他のナッツと同じく食物繊維やオレイン酸を豊富に含み、腸活に最適なナッツです。ピスタチオには不溶性食物繊維が多く含まれるため、便意はあるもののお腹が張って苦しい「弛緩性便秘」や便意が起こりにくい「直腸性便秘」の方におすすめ。
便秘中は代謝が悪くなりやすいため、ピスタチオに含まれるビタミン類も役に立ちます。ピスタチオには特にビタミンB群が豊富で、中でもビタミンB6はナッツの中でもトップレベルの含有量です。ビタミンB6は、タンパク質や脂質の代謝に深くかかわり、免疫力をアップさせ、髪や肌を健康に保ちます。また、ビタミンB1は疲労回復を助け、ビタミンB2は脂質や糖質の消化を助けてエネルギーに変える働きがあります。
まとめ
今回は、腸活の仕組みやメリット、おすすめのナッツについて紹介しました。ナッツには、腸内環境を整える栄養素が豊富に含まれます。ぜひ普段の食生活にナッツを取り入れて、腸から身体全体を健康にしましょう。