家庭菜園におすすめのナッツはアーモンド!育てる方法・注意点も
「日常的に食べたいお気に入りのナッツを自宅で栽培できたらいいな」と思いませんか。自分で育てたナッツの味は格別に感じられるのではないでしょうか。日本で育てることのできるナッツはクルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンドなどが挙げられます。なかでもアーモンドは近年、日本の気候にも強い品種が出回り、少ない手間で栽培ができるナッツとして人気です。 今回はアーモンドの育て方と注意点を説明します。
家庭菜園でアーモンドは育つ?
アーモンドはバラ科サクラ属に分類される植物で、同じバラ科のモモとほとんど同じように育てることができます。 3月には、サクラの花によく似たピンク色の可愛い花が咲くことも楽しみのひとつです。
アーモンドに適した環境
アーモンドはアメリカのカリフォルニアや地中海沿岸でよく育てられている植物です。栽培には温暖で乾燥した土地が適しており、日本では露地栽培であれば瀬戸内海沿岸の地域が最適と考えられています。それ以外の地域でも、寒さや長雨の対策をすれば育てることができ、鉢植えでも栽培可能です。
家庭菜園に適した品種
アーモンドは大きく分けて、堅核種と軟核種の2種があります。このうち食用にされている種類は殻の厚さが薄い軟核種です。仁の個体差が大きい堅核種は観賞用として栽培されていますが、日本での苗木の流通はほとんどありません。
軟核種はさらに2種に分けることができ、甘仁種と苦仁種があります。一般に食用とされているのは仁に甘みのある甘仁種で、苦仁種は薬用として用いられます。
日本で購入できる苗木は「ダベイ」という品種が多いですが、単に「アーモンド」としか書かれていない場合もあります。ダベイは雨に強く、1本植えるだけでよく結実する品種です。ただし、アーモンドの多くの品種は自身の花粉では受粉しないため、別の品種をそばに植えるようにしましょう。
アーモンドの育て方
アーモンドの栽培を始めるにあたって、苗木と種子のどちらから育てるか考えます。苗から育てる方が収穫までの年月を短縮することができ、失敗も少ないため人気です。アーモンドの種子を入手できた場合は種子からの栽培も可能です。ただし、種子の入手ルートは極めて限られています。
また、地面で育てるか、鉢植えで育てるかを検討します。地面に植える場合は、日当たりと風通しが良く、手入れしやすい場所を選びましょう。環境が合えば水やりの手間は大幅に省けます。
鉢植えであれば天気によって場所を移動させることができる点で便利です。ただしアーモンドは木であるため、しっかり根を張りやすい大きめの植木鉢が必要です。植木鉢はプラスチック製よりも、土に空気が通りやすい陶器製が望ましいです。ただし、陶器製は重く、割れや欠けの恐れがあり、大きなサイズは価格が高い欠点があります。小さめのプラスチック鉢のなかには通気性を改善したスリット鉢があるため、苗木が小さいうちはそちらを選ぶことも良いでしょう。果樹用サイズで十分な強度のあるプラスチック鉢はほぼ黒色のものに限られます。黒以外のプラスチック鉢は劣化が早くおすすめしません。
ステップ1 植え付け
苗木を植え付ける場合、最も適している時期は2~3月ですが、他の時期に植えることも可能です。苗は直径1.5m、深さ50cm以上の場所に植え付けをしましょう。水はけの良い土に、苗を植えるための穴を掘り完熟堆肥20~30L、熔リン200g、石灰資材200gを混ぜ込んでください。根を広げて植え込んでから、水をたっぷりやります。その際、植え付けが深すぎると水が溜まりやすくなってしまうため、盛り土をして高めに植えるよう注意してください。
種子から植える場合は3月が最も適しています。一晩水に浸けたり、あるいは冷蔵庫で冷やした種子を3.4cmの深さに植えると、1ヶ月半から2ヶ月ほどで発芽します。
土が乾燥しないように土の表面が乾いてきたら水をやります。ただし水を与えすぎると根腐れするため注意しましょう。
幼木の時には長時間夏の直射日光に当たると焼けてしまうため、半日は日陰になるようにしてください。
発芽後しばらくしてから有機肥料を少し入れます。鉢で発芽させ地植えに移す場合は、翌年2~3月に植え替えを行うと良いでしょう。
ステップ2 水・肥料を与える
アーモンドは乾燥を好むため、毎日の水やりは不要です。1、2日おきにやるようにしてください。むしろ水を与えすぎると根腐れを起こすため、注意が必要ですが、好天続きの季節に全く水やりをしないとアーモンドに渋味が出てしまいます。
長雨に弱いアーモンドは梅雨をどのように乗り切るかがポイントです。屋根の下に移動できる鉢植えで育てるか、雨よけを作るなど工夫すると良いでしょう。夏になったら、昼ではなく朝夕に水やりをしましょう。
植木鉢の場合は受け皿を置かずに水が流れ出るようにしてください。
アーモンドは肥料が過剰になることを嫌うため、即効性の液体肥料などは使用しないでおきましょう。年に1回、根が活動する10~11月に遅効性の元肥を撒き、軽く土の表面を耕します。肥料の量は、1~3年目は200g、4~5年目は300g、5年目以降は500gを目安にしてください。根の先端にやるようにすると効果的です。
ステップ3 剪定
剪定は落葉期の冬に行います。苗木は地面から40~50cmほどの部分で剪定します。そして新しく生えた枝のうち主枝2本を選び、残りの枝は剪定します。その後、日当たりと風通しがよくなるようにバランス良く、内向きの枝や弱っている枝など余分な枝を剪定するようにしてください。枝が斜めに広がっていくような形が良いです。
ただし大きく切ると木が痛み、1年ほど実を付けなくなる点には留意してください。木の形を乱す枝や、木の根元から生えた芽は早めに摘み取るようにします。
ステップ4 結実
花が散ってから実がなり、5~6月にかけて段々実が膨らんできます。若い実を摘んで間引く作業は不要です。
せっかく結実しても長雨に当たると落ちてしまうため、梅雨の時期に雨にさらさないようにするのがポイントです。
実が重くなってくると日の当たり方が変化するため、必要に応じて支柱を立てたり、枝を紐などで吊り上げたりするなど対処してください。
ステップ5 収穫
収穫時期は7~8月頃です。木の先端や日当たりの良い場所から順に成熟してきます。果肉がはじけ、種が見えるようになったらすぐに収穫してください。収穫が遅れるとカビが生えたり虫に食われて食べられなくなってしまう恐れがあります。
そして、1週間陰干しした後に種の殻を割ります。手では剥けないため、ペンチなどを使用しましょう。食用とする部分は種の中にある仁です。揚げたり炒ったりしてアーモンドがこんがり色づけば完成です。そのまま食べるほか、料理やお菓子作りなどにも使用できます。種子を調理せずに翌年まで乾燥保管しておけば、春に播くこともできます。
アーモンドを育てる時の注意点
簡単に育てることのできるアーモンドですが、天候や病虫害によって思い通りに育てられないことも多々あります。知識をつけてできるだけの対処はした上で、うまく収穫できなくてもがっかりしすぎない、気楽な気持ちで育てることも大切です。
苗木選び
スーパーで売っている食用のアーモンドを土に植えても栽培することはできません。食用アーモンドは殆どの場合、火が通っているからです。また、自家結実性のない品種の種子は、遺伝的に同じ品種が生えてくるわけではありません。
アーモンドを栽培するためには、一般的にホームセンターや園芸店、ネット通販などでアーモンドの苗木を購入するのが便利です。
アーモンドの苗木の多くは他の種類の木に接ぎ木してあります。苗木の高さとバランスが良く、葉が黄色く変色していないものを選びましょう。
病害虫防除
アーモンド栽培で注意すべき害虫はアブラムシ、コスカシバ、ウメケムシなどです。せっかく家庭で育てるなら農薬はあまり使いたくありませんよね。見つけ次第早めに駆除しましょう。特にアブラムシは増殖のスピードが早いため、駆除が結構大変です。殺虫剤を薄めて吹きかけると効果的です。ただし、農薬を使用する場合は、濃度と散布時期に注意してください。
アーモンドがかかりやすい病気は黒星病と縮葉病です。縮葉病は雨で低温が続くと他の葉っぱに伝染してしまいます。病気にかかった葉は切り落として処分し、株周りに殺菌剤を散布しましょう。また、3月初旬と収穫後の時期には病害虫対策で石灰硫黄合剤を散布しておくと良いでしょう。
防寒対策
アーモンドは寒さに弱い植物です。-7度程度の気温には耐えるものの、霜に当たると弱ってしまうため注意が必要です。11月以降は根元にワラや腐葉土を敷いて寒さの対策をしてください。気温の低い冬は、水をやると土の温度が下がってしまうため、水やりは控えましょう。
サイズ
アーモンドは5mほどの高さにまで大きく成長する植物です。小さめのサイズを維持したい場合は定期的に強めの剪定を行うか、植木鉢で育てましょう。
植木鉢で育てる場合、根詰まりを起こし生育が悪くなるため2、3年ごとに植え替えをし、古い根を整理することをおすすめします。大きくしたい場合はひと回り大きな鉢に変え、そのままのサイズを保ちたい場合は根を3割ほどカットして新しい用土に植えましょう。
まとめ
自分でアーモンドの木を育てることによって、一層アーモンドが好きになったり、育てる過程で何か発見があるなど、新たな楽しみ方ができるのではないでしょうか。特に、アーモンドの花はサクラの代わりに花見に使われるほど見応えがあります。ぜひアーモンドと一緒に四季を感じてみてください。