バナナは何種類ある?メジャーな品種・珍しい品種と産地を紹介
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安くて栄養価の高いフルーツとして、朝食やおやつにぴったりのバナナ。 普段、何気なく食しているバナナは「何種類あるのか」気になったことはありませんか? この記事では、バナナは何種類あるのか、品種や産地について紹介します。同じバナナでも地域によっては別の名前で呼ばれることもあり、違うバナナが同じ名前で呼ばれることもありますが、日本に関係なくあまりに煩雑なハナシにはここでは触れないことにします。
バナナの品種は何種類ある?
バナナは木になる、と思ってはいませんか?バナナは木ではなく、多年生の草です。
米などと同じ単子葉植物、Musaceaeバショウ科Musaバショウ属の植物で、食用バナナはそのなかのEumusa sectionユームサ・セクションに属するものが殆どです。栽培されているバナナはMusa×paradisiacaムサ・パラディシアカとされることが多いです。これはマレー半島辺りが原産のMusa acuminataムサ・アクミナータとインド東部から太平洋諸島辺りが原産のMusa balbisianaムサ・バルビシアナが複雑に交配されて出来上がったものとされています。
このうち、ムサ・アクミナータはほぼすべての食用バナナにその遺伝子が入っています。バナナの分類でAABとかAAAといった記号が出てくることがありますが、この両種の遺伝子の組み合わせを表したものです。3文字並んでいるのは3倍体だからです。
【参考】BANANA – Name, Taxonomy, Botany
バナナの品種は栽培歴も長いことから1000種以上あるといわれており、食べ方で分けると「生食用」と「調理用」に分けられます。
他にニューギニアを中心にポリネシアからメラネシアにかけてはMusa fehiムサ・フェイという別セクションに属する食用バナナがありますが、日本で見かけることはまずないでしょう。
植物分類学的には、バショウ属には約90種あり、全部が食用になるかどうかは分かりませんが、一般には観賞用で食用とされないMusa basjooバショウの果実も食べてみるとそれなりに甘いそうです。
【参考】】Musa L. (worldfloraonline.org)
【参考】清水秀男(2009)バショウの果実について、熱帯動植物友の会会報、No.140
調理用バナナとは?
日本でよく食べられるバナナは「フルーツ」としての「生食用バナナ」が一般的ですが、生食用バナナ以外にも、世界には「調理用バナナ」も存在します。調理用バナナとは、食事の素材として調理されて食されるタイプのバナナです。
日本でメジャーなバナナはキャベンディッシュ(AAA)
日本のスーパーマーケット等で売られている主なバナナの品種について紹介します。
キャベンディッシュ・バナナの大本はイギリスのChatsworth Houseチャッツワースにモーリシャスから1830年に導入されたバナナが起源とされています。ここから世界各地に広がっていき、チャッツワースはキャベンディッシュ家の所有であったことからこのバナナはキャベンディッシュと呼ばれるようになりました。
この時のバナナはDwalf Cavendishドワーフ・キャベンディッシュでした。株分けなどの栄養繁殖では親と同じクローンとなりますが、まれに形質が違ってくる場合があり、優良なものは選抜され、新たな品種とされます。
大きく育つからジャイアントで、成株の高さや果実の形状の違いでいくつかの系統があります。尚、「種」、「品種」、「系統」とか分類に関する用語は、ここでは分類学で使用する厳密な用法に従っていません。
ジャイアント・キャベンディッシュ
インターネットで調べると日本で流通されているバナナの多くは「ジャイアント・キャベンディッシュ」という品種で、主な産地はフィリピン、エクアドル、ペルーなど。通常、単に「キャベンディッシュ」と呼ばれます。
日本でのシェア率は約8割を占めており、1970年代から日本に流通し始めたとされていますが、現時点でも同じかは関連文献を確認できませんでした。輸入先が変わること、輸入者が差別化を図るため新たな品種を求めることがその理由です。厚い皮で覆われているジャイアント・キャベンディッシュは日持ちが良く、さっぱりとした風味が特徴です。
また、標高400m〜1000mの高地で栽培されるものは、「高地栽培(高原)バナナ」としてブランド化されており、各メーカーが「完熟王」や「プレシャス」などのブランド名で販売しています。
グラネイン
「Grand Nainグラ(ンド)ネイン」というキャベンディッシュ系の品種のバナナも日本で多く流通しています。ブランド名はチキータです。
主な産地は南米やインドで、濃厚な甘みとコクをもつことが特徴です。味以外に、成長が早い、風害に強いといった栽培上のメリットがあります。
その他のバナナの種類
世界には、普段あまり見かけない珍しいバナナがたくさんあります。日本で入手可能なその他のバナナの種類について紹介します。
- 島バナナ
- 台湾バナナ(北蕉)
- モンキーバナナ(セニョリータ・オリート)
- ラカタン
- モラード(レッドバナナ)
- 銀バナナ
- アイスクリームブルーバナナ
- キウイーナ
- グロスミシェル
島バナナ
「島バナナ(AAB)」は、沖縄県や鹿児島県などの島で栽培されているバナナ。大きさは一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)に比べて小さいです。甘みも酸味も強く、濃厚であることが特徴とされています。
インターネットで調べた限り、島バナナの希少価値は高く、一般的に一房1,000円をこえることが多いようです。
島バナの由来ですが、1888年ころ、小笠原から沖縄にもたらされた品種とされています。遺伝子型を調べたところ、フィリピンのラツンダンバナナと同じだそうです。
沖縄では島で栽培されたものは「島バナナ」、フィリピンから輸入したものは「モンキーバナナ」の名前で販売していたそうで、県民の方々は同じものと認識されておられたようですが、今もそうなのかは分かりませんでした。
【参考】上地玄作(2003)沖縄の島バナナとフィリピンのラツンダンバナナ、熱帯動植物友の会会報、No.118
島バナナを甘く追熟させるには25℃以上の高温が必要で、島バナナを美味しく食べるには、やっぱり沖縄に行かないとだめですね。
【参考】清水秀男(2003)ラツンダンの試食に挑戦、同上
台湾バナナ(北蕉)
台湾でも、多くの品種のバナナが栽培されていますが、台湾バナナと言えば「北蕉」です。台湾バナナの代表格である北蕉(AAA)はキャベンディッシュに属する大変古い品種であり、およそ260年前に中国南部から持ち込まれた品種だといわれています。ということは、イギリスにわたる前のキャベンディッシュの元祖の血を引いていることになりますが、今回は関連文献を確認できませんでした。台湾北部で広く栽培されてきたことから北蕉と呼ばれるようになりました。
大きさは日本の市場で見かける一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)に比べて小さく、全体的に丸みを帯びています。しっかりとした濃厚な味が特徴です。
モンキーバナナ(オリート)
「モンキーバナナ(AA、2倍体です)」は、大きさが約7cmの小型バナナです。ブランド名はフィリピン産のものが「セニョリータ」、エクアドル産のものが「ボニータ」と呼ばれています。
小さなモンキーバナナは甘くて食べやすく、スナック感覚で食べられます。子供のおやつや、お菓子作りに向いているバナナです。因みに、前出のように沖縄ではラツンダンバナナをモンキーバナナと呼んでいるそうです。
ラカタン
「ラカタンLacatan(AA、2倍体です)」はフィリピンで栽培されているバナナです。見た目は一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)に似ていますが、若干小ぶりで、実の色がゴールドである特徴をもっています。クエン酸が多く含まれており、ほのかな酸味とさっぱりとした風味が特徴です。
少々ややこしいハナシですが、ラテンアメリカ諸国でラカタンと呼ばれ栽培されているバナナは、上述のラカタンとは別種となるキャベンディッシュ系で(AAA)、ここ日本にも輸入されている可能性がありますが、今回は関連文献を確認できませんでした。
モラード(レッドバナナ)
「モラードMorado(レッドバナナ)(AAA)」は、フィリピンで栽培されている赤いバナナです。Moradoはスペイン語で赤紫を意味します。
【参考】上地玄作(2003)フィリピン特産のバナナの味について、熱帯動植物友の会会報、No.119
赤い色の皮をもつレッドバナナですが、実の部分は一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)と同様に黄色っぽい色味をもち、味は甘さ控えめ。しかし完熟すると、独特の爽やかな香りをもつといわれています。
銀バナナ
「銀バナナ(ナムアヌアン)Kluai Namwa Nuan」は、最近(2010年ころ)になって沖縄県で栽培され始めたバナナです。果皮が青く、未熟の状態のとき、表面の白い粉をふいたような感じが「銀白色」にみえることから、銀バナナと名付けられたとされています。形は島バナナよりもさらに太く、味は濃厚であることが特徴です。
【参考】銀バナナ、旬の食材百科
アイスクリームブルーバナナ
「アイスクリームブルーバナナ」は、Blue Javaブルー・ジャバ(ABB)という品種で、熟す前の果皮の色が「青銀色」である珍しいバナナで、熱帯植物にしては耐寒性があることが特徴です。大きさは、一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)よりも小さく、太いです。
珍しいのは果皮の色だけでなく、その味には「バニラカスタード」のフレーバーがあり、食感も非常にやわらかいといわれています。
キウイーナ
「キウイーナ」は、フィリピンのスミフルバナナ研究所にて、品種改良を重ねて誕生したバナナです。一般的なバナナよりも酸味が強く「まるでキウイのような」爽やかでさっぱりとした味わいをもちます。
グロスミシェル
「グロスミシェルGros Michel(AAA)」は、1950年代までは世界の主要なバナナの品種でしたが、パナマ病のため壊滅状態に陥り、その後、栽培バナナの主流はキャベンディッシュに移行したという経緯があります。歴史的には1830年代にフランス人のJean Pouyatがカリブ海のマルティニーク島で記録したとされています。分かったのはそこまでで、その前はどこから来たのか、或いはマルティニーク島で変異したのかはわかりませんでした。
【参考】Gros Michel Banana (Big Mike) – Miami Fruit
現在では生き残りが細々と栽培が続けられており、違う名前で栽培されています。ミャンマーではThihmwe、マレーシアではPisang Ambon、キューバではJohnson、ハワイではBluefieldsと呼ばれています。東南アジアのどこかにはマルティニーク島に渡る前のグロスミシェルが残っているかも知れません。最近、沖縄産でない国産バナナとして注目を浴びている品種は、どういう訳かグロスミシェルです。正確にはグロスミシェルを日本の技術で改良(耐寒性のアップ)した苗です。このバナナは海外にも紹介されました。
【参考】A Quest for the Gros Michel, the Great Banana of Yesteryear - Gastro Obscura
【参考】農業【凍結解凍覚醒技術】 | アグローバリー株式会社
【参考】Banana peel no longer disposable with edible skins you can now really sink your teeth into
その他の国産バナナの情報は下記の資料に紹介されています。
【参考】熱川バナナワニ園
主な調理用バナナ
先述したように、バナナには「生食用」と「調理用」があります。ここでは、主な調理用バナナについて紹介します。
- プランテイン
- サババナナ
- ツンドク
- カルタババナナ
プランテイン(プランテン)
「プランテイン」は調理用バナナと呼ばれるものの総称として用いられています。従って、特定の種や品種を表したものではありません。完熟すれば甘くなり、生食も可能なようです。日本に多く流通されているものはフィリピン産のものです。
サババナナ
「サババナナSaba(BBB)」は、フィリピンやインドネシア、マレーシア、シンガポールなど、主に東南アジアで栽培されている品種です。生食用としても美味しいですが、産地では、加熱調理用のバナナとして使用されています。日本に輸入されるバナナチップはこのサバから作られることが多いようです。カルダバのバナナチップよりやや柔らかくポリポリした食感です。
フィリピンでは、現地のポピュラーな調味料、バナナケチャップの原料にも使われています。
【参考】田中一雄(2008)熱帯に沈む夕日はバナナ色―バナナチップスとお国柄、熱帯動植物友の会会報、No.136
サババナナの特徴は、一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)よりも小さく、太い形状で、断面は4または5角形の形です。ツンドク
「Tindokツンドク(AAB)」は、一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)よりも大きく、果皮が緑色であることが特徴です。主な産地はフィリピンで、牛の角に形が似ていることから別名「ホーンバナナ」「牛角バナナ」とも呼ばれています。味は甘みよりも渋みが強いことが特徴です。
カルダババナナ
「カルダババナナCardaba (BBB)」は、一般的なバナナ(ジャイアント・キャベンディッシュ)よりも小さく太い形状をしており、主な産地はフィリピンです。フィリピンでは、主食としてもバナナチップスなどのおやつとしても食されており、調理方法もさまざまです。カルダバのバナナチップはやや硬めだそうです。
まとめ
バナナの種類や品種について紹介しました。世界には日本であまり見られないバナナも多くあることがおわかりいただけましたか?しかし、日本でも、一部のスーパーなどでは、見たことのないバナナを発見できることもあるかもしれません。
また、バナナの栽培が盛んな海外の旅先へ行った際などは、日本とは異なったバナナの食べ方を試してみることも旅や滞在の思い出のひとつとなるのではないでしょうか。