大豆のビタミン・ミネラルについて詳しく紹介!大豆に含まれるファイトケミカルとは?

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“大豆の栄養・その1”、“大豆の栄養・その2”で大豆の五大栄養素、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルについてみてきました。本章では新しく見いだされた大豆の機能性成分をみていきましょう。 こうした成分はフィトケミカル(またはファイトケミカル)とも呼ばれます。フィトまたはファイトは“植物の”という意味の接頭語です。

大豆イソフラボン

大豆のフィトケミカルでまず筆頭に挙がるのはイソフラボンでしょう。イソフラボンはポリフェノールの1グループです。ポリフェノールの大雑把な分類は下記のとおりです。

  • フラボノイド

    イソフラボン、アントシアニン、カテキン、ルチンなど

  • リグナン

    セサミンなど

  • その他のポリフェノール

イソフラボンはマメ科植物に含まれるフラボノイドで、大豆以外のマメ科植物(クズなど)でも知られています。

大豆イソフラボンは大豆の胚芽に多く含まれます。大豆イソフラボンと通常呼んでいる物質は、多くが糖と結合した大豆イソフラボン配糖体として大豆中に存在し、それらが腸内細菌の働きで糖が分離して大豆イソフラボンアグリコンとなります。

大豆イソフラボンとは、この配糖体とアグリコンの総称のことで、アグリコンとしてはゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの3種類が知られています。


大豆にはアグリコン換算で100gあたり88~208mg含まれています。

大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)と化学構造が似ていることから、植物性エストロゲンとも呼ばれます。

このことから女性ホルモン様作用を発揮することが示唆され、農林水産省の大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aを引用すると「骨粗しょう症、乳がんや前立腺がん等の予防効果が期待されるが、一方、乳がん発症や再発のリスクを高める可能性も考えられる。しかし未だ実際に多くの研究が行われている段階にあり、ヒトにおける大豆イソフラボンの有効性と安全性についての議論は確立していない。」とあります。


ここだけ読めば食べて良いのか悪いのか分からない議論ですが、大豆が健康に有用であることは間違いなく、ただし、大豆イソフラボンの過剰摂取にはリスクが想定されるということで、大豆イソフラボン摂取を目的としたサプリメントには摂取上限値が設定されています。

【参考】大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A:農林水産省

尚、大豆イソフラボンアグリコン3種にはそもそも作用に強弱があり、うちダイゼインは腸内細菌の働きでよりエストロゲン様作用の強いエクオールという物質に変化することが知られています。


大豆レシチン

『大豆の栄養・その1』で、大豆の脂質の分類に複合脂質があると書きました。レシチンは複合脂質のうちのリン脂質の1種です。大豆には1~1.5%ほど含まれているそうです。

大豆レシチンは、天然の乳化剤の一つとして、多くの食品に食品添加物として使用されています。レシチンには他に動物性レシチンとして卵黄レシチンが化粧品などに使用されています。いずれのレシチンも単独でサプリメントとしても利用されていますが、作用には少し違いがあります。


大豆レシチンには乳化作用があることから、血中のコレステロールが血管壁に溜まるのを防ぎ、動脈硬化の予防する作用があります。血流もよくなることが期待でき、肌に必要な栄養素が体全体にいきわたることから美肌にも効果があるといわれています。

また、肝細胞を保護し、肝機能を高める効果があるとされています。

【参考】レシチン・コリンの効果と摂取量 | 健康長寿ネット


大豆サポニン

サポニンとはトリテルペン及びステロイドの配糖体の総称で、植物の種類(一部、動物性もあり)により、毒性があったり、漢方薬に使われたり様々です。大豆サポニンはトリテルペン系となります。大豆には20種類以上のサポニンが含まれ、重量の0.2~0.5%にもなるそうです。

【参考】サポニン-薬学用語解説-日本薬学会


大豆サポニンは薬用とはされてきませんでしたが、近年、様々な機能性が見いだされています。大豆サポニンに毒性はないと言われています。

従来は煮豆調理時にアクとして除かれていた部分にサポニンが多く含まれています。平安中期の文献、延喜式には大豆の煮汁は「鬼毒を消し、痛みを止める」とあります。大豆のアクを残していたのか分かりませんが、大豆の機能性は昔から知られていた証拠です。

大豆サポニンの機能性には抗酸化作用が知られ、活性酸素を除去し、過酸化脂質を抑制し動脈硬化を予防する働きがあります。


また、大豆サポニンはアディポネクチンの分泌を促進します。アディポネクチンとは脂肪細胞から分泌されるホルモン様物質で、ダメージを受けた血管を修復することで動脈硬化を防ぎます。

インスリン分泌能力の低下を防ぎ、血管を広げる作用もあることで血糖値の改善、高血圧も予防します。エネルギー代謝や脂肪燃焼を促進することで、ダイエットにもつながります。このような作用があることから長寿ホルモンと呼ばれることもあります。

アディポネクチンは大豆サポニン以外の栄養素や適切な運動によっても分泌が促進されるそうです。昔の仏教僧は長生きした人が多かったイメージがありますが、精進料理で大豆を多く摂っていたことも関係しているかも知れませんね。


大豆ステロール

植物に含まれるステロールを植物ステロール(またはフィトステロール)と呼びます。種子の胚芽部分に多く含まれ、こめ油やごま油などにも多く含まれます。

植物ステロールにはコレステロールの吸収を抑えるといった作用があることからトクホでも利用されています。

大豆の植物ステロールはβ-シトステロールが最も多く(約半分)、ステグマステロール、カンペステロールの合計で50mg/100gほど含まれています。

【参考】富山県農林水産総合技術センター食品研究所研究報告「県内産農産物の植物ステロールの含量と組成について」鹿島、中川(2014)

大豆ステロールは食品よりも化粧品原料のエモリエント剤(皮膚軟化剤)、分かりやすく言い換えるとモイスチャー効果を期待できる成分として利用されています。


β-ニコチンアミドモノモノヌクレチオド(NMN)

長寿遺伝子として話題となるサーチュイン遺伝子による老化制御にβ-ニコチンアミドモノヌクレチオド(NMN)が関わっています。NMNはナイアシンの誘導体の一種で枝豆が豊富に含まれている食品の一つに挙げられています。といっても、含有量は臨床試験で効果が現れた量にはほど遠いですが。話題の一つとして、興味深いトピックスです。

【参考】JFRLニュースVol.7 No.10,日本食品分析センター


トリプシンインヒビター

トリプシンインヒビターというと大豆の有毒成分として有名です。大豆含むマメ科の種子には虫に食べられないように有毒成分を含むものがあります。消化不良を起こすとされており、加熱することで分解されますが、納豆や味噌のような発酵食品を除き、完全にはゼロとはならないと言われています。

大豆の場合、豆腐のトリプシンインヒビター残存率は10%ほどですが、冷ややっこを適量食べて体調がおかしくなったという話は聞きませんので、生の豆をそれなりの量を食べない限り、影響はないと考えても間違いはないと思います。


毒と薬は紙一重ですが、トリプシンインヒビターにはインスリンの産生を助ける作用があることが知られています。糖尿病が心配な方にはありがたい話ですが、筋肉を増強したいアスリートの方には注意が必要と言われています。

【参考】インスリンの分泌を増やすたんぱく質「トリプシンインヒビター」

【参考】食品総合研究所研究報告「大豆の加工とトリプシンインヒビター」堀井、宮崎(1973)


まとめ

この記事では大豆に含まれる機能性成分であるフィトケミカルを見てきました。

特定成分を濃縮したサプリメントや輸入医薬品の過剰摂取には注意が必要で、これらフィトケミカルはアレルゲンでもあることから、無条件で健康にプラスとは言えないですが、大豆がスーパーフードであることが分かりました。






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