植物油とは?原料や脂肪酸の種類、大注目のナッツオイルについて解説!
揚げ物や炒め物、ドレッシングなど、植物油は日々の食生活には欠かせない存在です。毎日摂取するものだからこそ、体に良いものを選びたいですよね。一口に植物油と言っても、原料や脂肪酸の種類によってさまざま。 そこで今回は、植物油とはそもそもどのようなものなのか、種類や近年注目を集めているナッツオイルについて紹介します。
植物油とは?
植物油とは、植物の種子(大豆、なたね、綿実、ごまなど)や果肉(パーム、オリーブ)、副生物(米ぬか、とうもろこし胚芽など)に含まれる脂質を抽出し、精製した油のことを指します。
油分を多く含む原料からは絞るだけで油が得られます(なたね、ごま等)。いわゆる一番搾りと称される油ですね。
絞りかすには油分が残っているので、溶媒(ノルマルヘキサン)でさらに油を抽出します。油分がさほど多くない原料(大豆等)では油は初めから溶媒で抽出されます。絞ったばかりの油には種皮や水分などが含まれるので、最低でも遠心分離のような分離工程が入ります。精製油は、一般的には、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭の工程を経たものです。
日本で広く普及しているサラダ油も、精製された植物油の一種です。日本農林規格(JAS)により規格が定められています。精製油より精製度が高いことが特徴で、ワックス分を除去しており、低温下でも濁ったり固化したりすることがありません。クセがないためさまざまな料理で活躍しますが、個性は弱くなります。
植物油の特徴
植物油の主な特徴は以下の通りです。
- 特有の味わい
- エネルギー源となる
- ビタミンEが豊富
それぞれ詳しく見ていきましょう。
特有の味わい
植物油には、原料によって独特のまろやかさ、コク、旨味があります。
植物油を使って調理をすることで、この特有の味わいで料理のおいしさをアップできます。また炭水化物に比べて消化に時間がかかるため、腹持ちが良く食べ過ぎ防止の効果も期待できます。
エネルギー源となる
炭水化物やたんぱく質が1gあたり4キロカロリーであることに対して、植物油は1gあたり約9キロカロリーです。人間が生きていくために欠かせないエネルギー源として、少量でも効率よく摂取できます。しかし食べ過ぎるとエネルギーの過剰摂取になるため注意が必要です。
ビタミンEが豊富
植物油には、健康維持に欠かせないビタミンEが豊富に含まれている植物油もあります。ビタミンEには抗酸化作用があり、がん予防の効果が期待できます。またビタミンA、D、E、Kなどの「脂溶性ビタミン」は、植物油と一緒に食べることで効率よく摂取できます。炒め物やサラダのドレッシングとして、ビタミン豊富な食材と植物油を一緒に食べるのがおすすめです。
精製度が高い植物油ではビタミンEが少ない場合があります。
植物油に含まれる脂肪酸
必須脂肪酸とは、脂質を構成する脂肪酸の中で、体内で作ることができず食べ物から摂取する必要があるものを指します。必須脂肪酸は不足すると皮膚の炎症を起こすリスクがあり、日々の食生活でしっかりと摂取することが大切です。植物油は、必須脂肪酸の主な供給源です。ここでは、植物油に含まれる脂肪酸を紹介します。
オレイン酸
オレイン酸は体内でも生成できる脂肪酸で、オリーブ油やなたね油に多く含まれます。善玉コレステロールを減らすことなく、悪玉コレステロール値だけを減らすことで、血中のコレステロールを適正に保つ働きがあるといわれています。酸化しにくい点が特徴です。
リノール酸
リノール酸とは必須脂肪酸のひとつで、ごま油や大豆油に多く含まれます。血中のコレステロール値を下げる働きがあるものの、過剰摂取になると悪玉コレステロールだけでなく善玉コレステロールも減らしてしまうため、摂取する量には注意が必要です。
α-リノレン酸
α-リノレン酸は必須脂肪酸のひとつで、しそ油に多く含まれます。血中の中性脂肪の値を下げて血液の流れを良くする働きがあり、生活習慣病の予防に効果的です。また、ガン細胞の増殖を抑えたり、アレルギー症状を改善したりする効果も期待できます。非常に酸化しやすい特徴があります。
パルミチン酸
パルミチン酸とは体内でも生成できる脂肪酸で、多くの動物性脂肪や植物油に含まれます。アブラヤシから作られるパーム油の主な構成成分で、酸化しにくい点が特徴です。悪玉コレステロール値を上げる働きがあり、摂取量が多いと心筋梗塞のリスクが上がります。
植物油の種類
植物油には原料となる素材によってさまざまな種類があり、含まれる脂肪酸や特徴も異なります。ここでは、植物油の種類と特徴を紹介します。
大豆
大豆の種子から作られる植物油が「大豆油」です。日本では代表的な食用油として親しまれ、サラダ油やマヨネーズ、マーガリンの原料としても広く用いられてきました。色は薄く、香りや味にはクセがなく調理全般に向いています。酸化しやすいため、何度も繰り返し使うには不向きです。主な脂肪酸は、リノール酸です。
なたね(キャノーラ)
菜の花の種子から作られる植物油が「なたね油」です。「キャノーラ油」とも呼ばれます。あっさりと淡白な風味で、熱に強く炒め物や揚げ物などの加熱調理に向いています。主な脂肪酸は、オレイン酸です。
ごま
ごまの種子から作られる植物油が「ごま油」です。一般的には圧搾前にごまを焙煎し、その煎り具合によって色や香りが異なる油が製造されます。独特の香ばしさと風味の良さが特徴で、天ぷらや中国料理、和風総菜などに広く使われます。主な脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸です。
べに花(サフラワー)
べに花の種子から作られる植物油が「べに花油」です。「サフラワー油」とも呼ばれます。さらりとしたまろやかな風味が特徴で、生での使用はもちろん炒め物や揚げ物など幅広く活用できます。主な脂肪酸は、オレイン酸です。
アマ二
亜麻の種子から作られる植物油が「アマ二油」です。食用だけでなく、インクや塗料などにも利用されています。動脈硬化の予防や血流の改善、免疫力の向上など、さまざまな健康効果が期待され、近年注目を高めています。主な脂肪酸は、α-リノレン酸、リノール酸です。
コーン
とうもろこしの胚芽から作られる植物油が「コーン油」です。ほのかな甘みとまろやかな風味があり、酸化しにくく日持ちがよい点が特徴です。熱に強く、揚げ物や炒め物に向いています。主な脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸です。
オリーブ
オリーブの実の果肉から作られる植物油が「オリーブ油」です。グレードが細かく分けられており、オリーブの実をペースト状にすりつぶして圧搾したものは「ヴァージンオリーブオイル」と呼ばれます。産地や生産者によって風味に特徴があり、精製されていないオリーブオイルではビタミンEやポリフェノールなどの栄養成分豊富に含むことから健康効果や美容効果が期待できます。主な脂肪酸は、オレイン酸です。
綿実
綿を取った後の種から作られる植物油が「綿実油」です。上品でまろやかな風味と冷めても風味が落ちにくい安定性が魅力です。「サラダ油の王様」と呼ばれ、高級油として親しまれてきました。天ぷら油やマーガリン、ショートニングの原料としても使われています。主な脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸です。
ココナッツ
ココヤシの大きな種子の白い部分から作られる植物油が「ココナッツオイル」です。飽和脂肪酸を多く含むオイルで、消化吸収がスムーズで分解が早いことが特徴です。ミルクのように甘い独特の香りがあります。主な脂肪酸は、オレイン酸です。
ひまわり
ひまわりの種子から作られる植物油が「ひまわり油」です。淡白で上品な味わいでクセがなく、マヨネーズの原料としても使われます。ビタミンEの含有量が100g中39mgと、他の植物油と比較しても豊富です。主な脂肪酸は、オレイン酸です。
パーム
油ヤシの果肉から作られる植物油が「パーム油」です。酸化しにくい性質を利用して、マーガリンやショートニングをはじめ、インスタントラーメン、アイスクリームなどさまざまな加工食品の原料として使われます。主な脂肪酸は、パルミチン酸、オレイン酸です。
グレープシード
ぶどうの種子から作られる植物油が「グレープシード」です。白ワインを作るときに取り除かれた種子を利用して、副産物として生まれました。
淡い黄色や緑などのきれいな色と、さっぱりとしたクセのない風味が特徴です。主な脂肪酸は、リノール酸です。
荏胡麻
荏胡麻(えごま)から作られる植物油が「荏胡麻油」です。えごまは植物学的には青しその変種なので、「しそ油」と特徴は同じとなり、酸化しやすく熱に弱い性質を持ちます。サラダのドレッシングやマリネなど、主に生食用に利用されます。主な脂肪酸は、α-リノレン酸です。
大注目のナッツオイルとは?
植物油のひとつである「ナッツオイル」。いずれも核(仁)から絞ります。お肌の健康維持に欠かせないさまざまな脂肪酸が豊富に含まれていることから、スキンケアで注目を集めていますが、化粧品原料としては長い実績を持つオイルも多いです。ここでは、代表的なナッツオイルの種類について紹介します。
ナッツ類はそもそも脂質を多く含むことから、含まれる脂肪酸を健康に活かしたいのであればそのまま食べるにこしたことはありません。食用油としてはコストパフォーマンスを求めるものではなく、独特のフレーバーが欲しいときに使用されることが多いようで、こだわりの1瓶ですね。
マカダミアナッツオイル
マカダミアナッツオイルはパルミトレイン酸を豊富に含みます。皮膚の健康維持や、インスリンの分泌を促進する働きがあるため、高血糖や糖尿病予防が期待できます。
パルミトレイン酸を摂りたいと思っても含む食品は動物性が多く、多く摂りたくない飽和脂肪酸も同時に摂取することになってしまいます。植物性では多く含む食品は少なく、その中でもマカダミアナッツはトップクラスです。そうしたことから食用にメリットがある数少ないナッツオイルといえます。
ほのかな香りと軽くさらりとした味わいが特徴です。熱に強く、野菜や鶏肉・豚肉のソテーにしてもナッツ特有の香りを存分に活かすことができます。アイスクリームのトッピングや、バターコーヒーのバター代わりに使うのもおすすめです。
化粧品原料としては幅広い製品に使用されており、使用歴も20年以上あります。パルミトレイン酸は人の皮膚に含まれていることから肌への馴染みがよく、保湿(エモリエント)効果も期待されるということです。
エモリエントとは、専門用語が並びますが「化粧品成分オンライン」によると「高い閉塞性により皮膚からの水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するために用いられる疎水性の脂質成分」ということだそうです。勉強になりますね。
【参考】化粧品成分オンライン
ヘーゼルナッツオイル
ヘーゼルナッツオイルは、ナッツ特有の上品な甘さとビターな香ばしさが特徴です。加熱に強いため、ローストしたお肉の下味に使ったり、スイーツの材料として混ぜ込んだりするのもおすすめです。味の濃い食材ともよく合います。
パルミトレイン酸をマカダミアナッツオイルとほぼ同じ割合で含むことから肌への馴染みがよいですが、化粧品原料として保湿効果は特に期待されていないようです。
ピスタチオオイル
「ナッツの女王」とも称される豊富な栄養を含むピスタチオから作られたオイルです。豊潤な香りと奥行きのある風味が特徴で、淡白な食材とよく合います。オレイン酸を多く含みます。
化粧品原料としては10年以上の使用実績があり、保湿(エモリエント)効果が期待されています。
アーモンドオイル
アーモンドの仁から絞られた植物油が「アーモンドオイル」です。アーモンドにはスウィート種とビター種があります。日常的に食べるスウィート系アーモンドオイルもスキンケアに使われることが多いようです。
一方、ビター系アーモンドはシアン化合物を含むため、輸入禁止対象品です。シアン化合物を除去したビターアーモンドオイルもありますが、日本のメーカー品ではありません。安価なアーモンドエッセンスは香料をアルコール等で薄めたもので、香料の由来は記載なく不明、香りの主成分は合成品で簡単に入手できます。
化粧品原料としては40年以上の使用実績があり、保湿(エモリエント)効果やベースとなる油分として使用されています。
くるみオイル
くるみの仁から絞られた植物油が「くるみオイル」です。「ウォールナッツオイル」とも呼ばれます。ほのかな甘味があり、和食とよく合います。アマニ油、荏胡麻油と同じく、α―リノレン酸を含むため酸化しやすいことに注意してください。日本のスーパーではあまり見かけないものの、ネットや専門店で手に入りやすいです。 お祖母ちゃんの知恵っぽいですが、昔の人はクルミ油を木製家具のメンテナンスに使っていました。
まとめ
今回は、植物油とはどのようなものなのか、種類や近年注目を集めているナッツオイルについて紹介しました。植物油は人間の身体に必須な3大栄養素のひとつ「脂質」を補い、健康維持に役立ちます。
さまざまな種類がある植物油から自分の健康や好みに合わせて選び、日々の食生活に取り入れてみてください。