登山にナッツが最適な理由!他の行動食との比較や携帯するポイント
トレーニングや健康の維持、観光などさまざまな目的で登山、ハイキング、トレッキングなど、山歩きを楽しむ人も多いでしょう。 そんな登山の際に気をつけるべき点のひとつが、シャリバテ(登山用語で、食べ物が足りずにバテてしまう状態)です。歩くだけとはいえ、山道を長時間歩いているとエネルギー切れしやすくなり、この症状に陥ります。空腹になると判断力や行動力が低下し、転んだり怪我をしたりする可能性が高まるため、注意が必要です。 そこで、シャリバテを防ぐために登山で重宝するのがナッツです。今回は登山用の行動食を選ぶ際の3箇条やナッツが登山におすすめの理由、ナッツを取り入れた行動食を持っていく際のポイントを紹介します。
登山でのシャリバテを防ぐ「行動食」
登山では消費するエネルギー量が多いため、ゆったり時間をかけて食べる食事以外にも、こまめにエネルギーを補給する必要があります。活動中に携帯して食べる食事を行動食(レーション)といい、もしもの場合の非常食としても欠かせない持ち物です。
行動食のメニューに決まりはありませんが、シャリバテを防ぐためにいくつかのポイントを意識して選びましょう。
以下では、行動食を選ぶ際の3箇条を説明します。
高カロリーである
行動食を食べる目的は、エネルギー切れの予防です。そのため、カロリーの高い食材が行動食に適しています。重い荷物を背負って起伏のある山道を歩いていると、思っている以上に多くのエネルギーを消費しています。
シャリバテにならないよう、エネルギーの変換が早い炭水化物を中心に摂取するようにしましょう。登山中は食べたものがすぐにエネルギーとなることが望ましく、炭水化物は行動食に必須の栄養素として推奨されています。
また、登山のような持久系の運動で、たくさん食事がとれない場合は脂質の摂取により効率的にエネルギーが補充できます。スケジュールや体調などを考え、適切な食材を選びましょう。
手軽に食べられる
行動食は短時間で立ち止まって食べたり、時には歩きながら食べたりするため、さっと取り出してこまめに食べられる食材が望ましいです。
また、疲れている時は食べることが億劫になりやすいですが、疲労が深刻になると、食べたくても食事が喉を通らなくなってしまうことがあります。そうなる前に、食欲がなくても食べたいと思えるような、自分の好きな食材を選びましょう。携帯しやすい
数日にわたる登山でも劣化しづらい、日持ちの良い食材を選びましょう。また、登山でのゴミは全て自分で持ち帰るのが基本です。食べた後のゴミが多いと邪魔になるため、ゴミがあまり出ない食材を選ぶと良いでしょう。また、重くて扱いにくい食材は体力の消耗にもつながるため、小さくて軽い食材がおすすめです。
ナッツが登山に人気な理由
数ある携行行動食メニューの中でも、多くの人に愛されている食材がナッツです。どのナッツも登山の定番ですが、人気のポイントは何でしょうか。ナッツが登山の行動食として重宝されている理由を3つ、栄養面を中心に詳しく説明します。
「行動食」の3条件を満たしている
まず、ナッツは基本的に高カロリーな食材です。以下の表ではナッツと他の定番行動食のカロリーを比較しています。ナッツは登山に必要なカロリー(エネルギー)を効率的に摂取するのに最適であることが分かります。
ちなみに、人の一日消費カロリー1500~2000kcalに加えて、登山中はおおよそ1時間当たり350kcalを消費します。
食材名 | 100gあたりのエネルギー(kcal) | 100gあたりの炭水化物(g) | 100gあたりの脂質(g) |
---|---|---|---|
くるみ(いり) | 674kcal | 11.7g | 68.8g |
アーモンド(いり) | 608kcal | 20.7g | 54.1g |
カシューナッツ(フライ) | 576kcal | 26.7g | 47.6g |
ピーナッツ(いり) | 585kcal | 19.6g | 48.4g |
マカダミアナッツ(いり) | 684kcal | 12.2g | 76.7g |
ピスタチオ(いり) | 615kcal | 20.9g | 56.1g |
ピーカンナッツ | 702kcal | 13.3g | 73.4 |
ミルクチョコレート | 558kcal | 55.8g | 34.1g |
練りようかん | 296kcal | 70.0g | 0.2g |
ポテトチップス | 554kcal | 54.7g | 35.2g |
おにぎり(うるち米) | 168kcal | 37.1g | 0.3g |
干しぶどう | 301kcal | 80.7g | 0.2g |
ドライマンゴー | 332kcal | 82.0g | 0.6g |
【参考】日本食品標準成分表−文部科学省
他の定番行動食と比較してナッツが優れている理由は、カロリー面以外にもいくつかあります。カロリー」以外の2条件、手軽さ、携帯性を比較してみましょう。
例えば夏場は気温が高く、チョコレートは溶けてしまいがちです。ようかんは食べる際ベタつき、手を拭く手間がかかります。また、スナック菓子はかさばり、割れやすいため持ち運びに注意が必要です。おにぎりは腐りやすいため、数日にわたる登山では初日に食べ切る必要があります。
さらに、これらの食品にはビタミンB群があまり含まれてないものがあります。それに引き換え、ナッツはどのような気温でも気にせず持ち歩くことができ、手を汚さずに食べられるだけでなく、ビタミンB群も豊富に含んでいる食材です。コンパクトで割れにくく、登山中に劣化しにくい点も特長でしょう。
高カロリーであるだけでなく、手軽に食べることができ携帯もしやすいため、行動食にぴったりであるといえます。
エネルギー変換をサポートする
行動食は運動しながら摂取するため、すぐにエネルギーに変化することが望ましいです。ナッツにはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸などの栄養素が含まれており、食物のエネルギー変換を助けます。
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ビタミンB6
- パントテン酸
糖質をエネルギーに変える際に役立つ。カシューナッツに多く含まれる。
脂質をエネルギーに変える際に役立つ。アーモンドに多く含まれる。
たんぱく質をエネルギーに変える際に役立つ。ピスタチオに多く含まれる。
エネルギーの生成を助ける役割がある。ピーナッツに多く含まれる。
これらの栄養素は、一緒に食べる他の食材のエネルギー変換も促進すると考えられます。
疲労回復効果がある
長い登山には重い疲労がつきものです。行動食に含まれる栄養素によって、疲労を少しでも軽くできることができれば良いですよね。ナッツを食べることで疲労の軽減効果を期待できる、以下の栄養素を摂取することができます。
- ビタミンB2
- ビタミンE
- カルシウム
乳酸などの疲労原因物質を取り除く際に必要とされる。アーモンドに多く含まれる。
細胞を錆びつかせ、身体の機能を低下させてしまう活性酸素は、疲労が蓄積した状態で増加するが、その働きを抑える。アーモンド、ピーナッツに多く含まれる。
筋肉のスムーズな動きを助けるだけでなく、精神的な疲労にも効果を発揮する。アーモンドに多く含まれる。
登山でナッツを携帯するポイント
登山にぴったりの食材であるナッツを携帯する際のポイントを説明します。3つのステップで簡単に、オリジナル行動食の完成です。
自分に最適なミックスナッツを作る
行動食に取り入れるナッツは数種類をミックスすることで、飽きずに食べ続けることができ、栄養のバランスもよくなります。好きなナッツを自分で混ぜる以外にも、あらかじめ数種類ミックスされたナッツを購入する方法もあります。殻のついたナッツを持参する場合は、あらかじめ剥いておくと食べやすいです。 ナッツの1日の摂取量は1日に片手ひとつかみ分が目安とされていますが、エネルギー消費の大きい登山の行動食として食べる際は普段より多めに食べても大丈夫です。歩く距離に合わせて必要な量を調節してください。油で揚げないハイクオリティナッツ
トレイルミックスにする
ミックスナッツを準備したら、他の食材と組み合わせてトレイルミックスを作ります。体調によって食べたい味も変わるため、甘味、塩分、酸味など、さまざまな味をバランス良く取り入れてください。カレーやシナモンで、自分好みに味付けしても良いでしょう。
さくさく食感のフルーツクラッカー香ばし黒大豆とナッツの恵み。
特に、糖分はすぐにエネルギーに変わるため、糖分の含まれた食材をプラスするのがおすすめです。なかでもドライフルーツなどは携帯しやすく、食感もナッツとは異なるため、混ぜ込むのにぴったりです。マンゴーなど大きい食材は、あらかじめ食べやすく切っておいてください。
ノンオイルカリフォルニアレーズン
やわらかマンゴー
トレイルミックスはそのまま食べる以外にも、固めてエナジーバーにしたり、ホットケーキミックス等に混ぜ込んでマフィンを作ったりするなど、さまざまなアレンジが可能です。
ボトルに入れる
トレイルミックスが完成したら、持参する方法を考えます。取り出しにくいと食べるのが億劫になりやすいため、収納場所や容器は意外と重要なポイントです。リュックを下さなくても取り出せる、ポケットやウェストポーチなどに入れる方法が一般的でしょう。
持ち運ぶ容器はチャックのついた袋や、お弁当箱などが考えられます。おすすめは、口の広いプラスチックボトルに入れる方法です。ボトルを収納するポケットがリュックについていれば出し入れがしやすく、ボトルから口に直接ナッツを流し込めるため、少ない動作で食べることができます。
数日に渡る登山の際は、1日分ずつを袋からボトルに移して食べられるようにすれば、コンパクトかつ計画的に消費できます。